皆さんこんにちは。
受験ドクターの理科大好き講師、澤田重治です。
今回も、簡単に手に入る材料だけを使って、家でも手軽にできる楽しい理科実験を紹介していきますよ。
実際、今回の実験に使った材料は、なんとすべて100円ショップで購入したものです!
(最近の100円ショップってすごいですね……。)
第2回のテーマは、受験生にはお馴染みの「ピンホールカメラ(針穴写真機)」です。
まずは、実際の中学受験での出題例をご覧ください。
中学入試では、どのように聞かれるの?
【平成23年度 フェリス女学院中学校 入試問題より抜粋】 大問[2]
太さがわずかに異なる二本の角づつを用意し,太い方を外づつ,細い方を内づつと呼ぶことにします。外づつの片方のはしには黒い紙を張り,中央に小さな針穴(ピンホール)をあけます。内づつの片方のはしには白い半とう明の紙(スクリーン)を張ります。外づつと内づつを次の図1のように重ねて,矢印(⇐)の向きにのぞくと,スクリーンに像が映っているのを観察することができます。このことは図2のように,光がまっすぐ進む性質から理解することができます。
(1) 外づつおよび内づつの内側の面の色は,何色が最も適していますか。
(2) 図3のような人が見える位置に立ち,その人を図2のように観察します。スクリーンに映る像の見え方は,以下のア~エのどれになると考えられますか。
(3) (2)のように見えているとき,内づつを図1の矢印(⇒)の向きに移動させると,スクリーンに映る像の大きさおよび明るさは,2のときに比べてどうなりますか。それぞれ以下のア~ウから選び,記号で答えなさい。
実際の入試では、この後に(4),(5)と問題が続くのですが、聞き方が難しいだけで、ピンホールカメラの問題としては典型的……あまり面白くないので、今回はここまでにしておきます。
さて、フェリスの人気を考えれば、ここに抜粋した問題は比較的易しい部類だと思いますが、皆様はどのようにお感じになりましたか?
(2)・(3)が典型的な問題であるのに対して、(1)の出題は少し珍しい視点だったかもしれませんね。
ということで、易しい(2)・(3)から片付けてしまいましょう。
まずは(2)です。
ピンホールカメラでは、小さな穴(ピンホール)を通って直進した光が像を作りますので、上下左右が逆になります。(後から紹介する実験でも、実際に観察できる像をお見せします!)
基本中の基本ですので、ぜひ覚えておきましょう。
つまり、左上に見える旗が、右下に映ることになりますので、正解は「エ」です。
次に(3)です。
小さな穴(ピンホール)を通った光は、次第に広がっていきます。
その途中で、スクリーン(半透明の白い紙)にぶつかると、そこに像が見られるようになるのです。
内づつを矢印の向きに動かしていくと、スクリーンがピンホールから離れ、より広がった光が像を作るようになります。
つまり、像は大きくなることになりますので、「大きさ」については「ア」が正解です。
また、光が広がって像が大きくなるということは、ピンホールから入った同じ量の光で、より広い面積を照らさなければならないことになります。
したがって、像の明るさは暗くなりますので、「明るさ」の正解は「イ」となります。
さて、残るは問題の(1)ですね。
外づつ・内づつの内側を何色にするのが良いのか?
問題文を見る限り、観察する物体の色については何も指定されていませんから、色合いの違いというよりは光の吸収率の違いでしょう。
(屈折が関係する問題の場合には、光の色によって屈折率が異なるので、色彩の違いが答えになる可能性もありますが、ピンホールカメラには光の屈折が関係していません。)
そうなると、様々な答えが存在するようで、実は二択――つまり、「黒」か「白」かが正解です。
白色にして、内部で光を反射させた方が良いのでしょうか?
それとも、黒色にして、光を吸収させた方が良いのでしょうか?
もちろん、理論的に考えれば、おそらく「黒」が正解だという見当はつきます。
ピンホールカメラというのは、小さな穴を通った光が直進することによって、他の光と混ざらずにスクリーンにあたることがその仕組みの本質です。
当然、違う光が混ざるほど、像は不鮮明になってしまいますから、余計な光は吸収してくれた方が良いことになります。
しかし、すでにピンホールを通った後の光が通るつつの内側の色が、そんなに像の見え方に影響するものなのでしょうか?
さっそく実験で確かめてみましょう!
ピンホールカメラを作ってみよう!
【用意するもの】
・工作用紙(ボール紙)
・白い紙(今回は模造紙を使用)
・黒い紙(今回は画用紙を使用)
・トレーシングペーパー(写し紙)
・鉛筆
・定規
・はさみ(カッター)
・のり
・針状のもの(今回はコンパスの針を使用)
まずは、工作用紙(ボール紙)を使って、つつの部分を作ります。
外づつと内づつをつくりますが、内づつの一辺の長さを2mm程度短くすることで、うまくつつがスライドするようにします。
私は、下の左側の写真のように、内づつで2枚、外づつで2枚の工作用紙を使っています。
内側が白の場合と黒の場合、2種類のピンホールカメラを作りますので、これを2セット用意しました。
右側の写真を見ていただくと、内づつ(下側)と外づつ(上側)の一辺の幅を変えたことで、のりしろ部分の幅がわずかに違うことがお分かりいただけると思います。
なお、カッターの背の部分で折り目をつけておくと、厚みがある紙でもきれいに折れますよ。
さて、これに色のついた紙を貼っていきます。
内側に白い紙を貼ったものと、黒い紙を貼ったものを用意します。
実験には直接関係ないことですが、写真で説明するときに分かりやすいように、私はつつの外側にも色紙を貼りました。
内づつには水色、外づつには青色の紙を貼ってあります。
外づつのはしに張る「黒い紙」を黒の厚紙で作り、中央にコンパスの針で穴を開けます。(左側)
また、内づつのはしに張る「スクリーン」として、工作用紙で作った枠に、トレーシングペーパー(写し紙)を接着したものを作りました。(右側)
これらの部品を、実際に組み立てていきます。完成品がこちら。
右側の写真は、観察する向きから、内づつの内部にあるスクリーンを見た様子(つつの内側に白い紙を貼った方)です。
内側の色が異なる2つのピンホールカメラを並べて、内づつ側(観察する向き)から見たのが下の写真です。
大きさもそっくり同じに作ることができました。
実際に観察してみよう!
大きな装置を作ってしまいましたので、もとの物体から出る光が強くないと、はっきりした像にはなりません。
そこで、下の写真のように、問題を元につくった図(光量を増やすために線を太くしています)をプロジェクターで壁に映し、その光の像をピンホールカメラで観察してみました。
その結果は――下の写真をご覧ください。
左側がつつの内側に白い紙を貼ったもの、右側が黒い紙を貼ったものです。
おお! まったく同じ条件で観察しているのに、明らかに黒い紙を貼った方が鮮明に見えますね!
理屈では分かっていましたが、ここまで違うとは思いませんでした。
ついでなので、観察しやすい黒のピンホールカメラを使って、内づつの位置の違いで像がどのように変化するかも観察してみました。
左側がスクリーンをピンホールに近づけた(つつを押し込んだ)場合、右側がスクリーンをピンホールから遠ざけた(つつを引いた)場合です。
つつを引く(スクリーンを遠ざける)と、像の大きさは大きくなるが、明るさは暗くなる――(3)の問題で問われていたことも、実験ではっきりと確認できました!
百聞は一見にしかず――これだから実験はやめられないですよね!
次回もお楽しみに!