皆さんこんにちは。
受験ドクターの理科大好き講師、澤田重治です。
前回に続き、「リード文を読む」理科入試問題の対策編です。
これまでのブログでは、リード文問題で求められる力を、
「①読解力」・「②理解力」・「③活用力」・「④連想力」・「⑤考察力」の五つに分けて分析してきました。
その中でも、今回は主に「③活用力」の対策を考えていきます。
活用力というのは、与えられた考え方や計算式を活用(利用)して解く力です。
イメージとしては、まだ習っていない単元の参考書を読んで、
自分で理解したことを使って問題を解くような感じでしょうか。
実際、活用力が必要な問題を出すような学校が求めている生徒は、
「一人で学ぶ力をもった受験生」なのだと思います。
自立した生徒が欲しいのです。
例えば、次のリード文をご覧ください。
酸性とアルカリ性の強さの尺度にpH(ピーエイチ)という値があります。
pHが7の時は中性、7より小さいときは酸性、7より大きいときはアルカリ性を表します。
また、酸性の時はpHが1小さくなるごとに酸性の度合いが10倍強くなり、
アルカリ性の時はpHが1大きくなるごとにアルカリ性の度合いが10倍強くなります。
また、pHは整数だけでなく小数で示すこともあります。
たとえばpH3.5はpH5.5より酸性の度合いが100倍強いことを表しています。
水に溶けて酸性を示す物質を酸、アルカリ性を示す物質をアルカリといい、
酸とアルカリを混ぜたとき、互いの性質を打ち消すことを中和と言います。
たとえば、pH5の、酸の水溶液1mLと、pH9の、アルカリの水溶液1mLを混ぜると
ちょうど中和します。
pH5の、酸の水溶液1mLと、pH8の、アルカリの水溶液10mLを混ぜると
ちょうど中和します。
いかがでしょうか?
このリード文の後に、次のような問題が出てきます。
(1) pH2の、酸の水溶液1mLに対して、pH9の、アルカリの水溶液を何mL
混ぜると、ちょうど中和しますか。
pHの計算は、文部科学省の学習指導要領では高校配当単元ですので、
中学校ですら出てきません。
当然、受験勉強の中でやったことのある生徒などいないでしょうから、
受験生全員が、このリード文だけを頼りに問題に取り組むのです。
「数値が1変化すると○倍になる」という考え方は、星の明るさ(等級)や、
マグニチュードで触れたことがあるはずですので、それが連想できれば
難しくありません。
この問題では、酸のpH2というのは、中性のpH7から5離れています。
一方、アルカリのpH9は、中性のpH7から2離れています。
そうなると、酸・アルカリの強さの度合いは3違うことになりますね。
中性のpH7から1離れると、強さの度合いは10倍になりますから、
3つ大きいということは、10×10×10=1000倍です。
より強い「酸」の水溶液が1mLなので、それとつり合うために、
アルカリは1000倍の1000mL必要であることになります。
このように、さすがのリード文問題でも、似たものすら扱ったことがない
というような話(たとえば微分や積分など)は要求されないのが普通です。
つまり、自分の引き出しの中から「似ているもの」を探せるかどうかが
勝負のカギとなるわけです。
対策としては、「共通点に注目する」ということです。
また、普段の学習の中で、それぞれの特徴をつかんでおくことも必要です。
こういう世界があることを見ておくと、日頃の学習姿勢も
変わってくるかもしれませんね。
次回も、「リード文問題対策」をお届けします。
どうぞお楽しみに!