皆さんこんにちは。
受験ドクターの理科大好き講師、澤田重治です。
前回に続き、百人一首の中で見つけた理科の世界を見てみましょう。
もちろん、中学受験に直結する内容を厳選しています!
今来むと いひしばかりに 長月の 有明の月を 待ち出でつるかな
「素性法師」という人がよんだ歌です。
何とこの人、平安京への遷都(せんと)を行った
「桓武天皇(かんむてんのう)」のひ孫らしいです。
今回も細かい文法は置いといて、ざっくり歌の意味を説明すると、
『すぐ来るって言うから、9月の長い夜をずっと待っていたのに……
有明の月が出てくる時間になってもまだ来ないってどういうつもり?』
という感じでしょうか。
女性の立場で詠(よ)んだ恨(うら)みの歌ですね。
➀ 有明の月は一つではない?
さて、この歌だけでなく、百人一首には度々登場する「有明の月」ですが、
皆さんが理科で教わった月の満ち欠けには、こんな名前の月はありませんでしたよね。
それもそのはず。
実は、「有明の月」というのは、特定の月を表す名前ではないのです。
東京近郊に暮らす私たちは、「有明」と聞くと地名を連想してしまいますが、
「夜が明けても、まだ空に有る(残っている)月」という意味なのです。
つまり、夜が明ける頃に月の入りを迎えるのが満月ですから、
満月を過ぎて新月を迎えるまでの月は、すべて「有明の月」ということになります。
おなじみの図で表すとこんな感じです。
ただし、実際に歌に詠まれる時には、特に下弦の月を過ぎた、
左側だけが光っている月を指していたようですね。
「それがどうしたの?」って思ったあなた。
まだまだ月についての理解が甘いですよ。
② 「有明の月」が意味するものは?
さて、ここで理解を深めるために、月の出・南中・月の入りの時刻について考えてみましょう。
皆さんも、知識としては分かっていますよね?
上弦……(月の出)12:00 (南中)18:00 (月の入り)0:00
満月……(月の出)18:00 (南中)0:00 (月の入り)6:00
下弦……(月の出)0:00 (南中)6:00 (月の入り)12:00
新月……(月の出)6:00 (南中)12:00 (月の入り)18:00
ここで、「有明の月」が、主に下弦の月から新月の間の月であることを考えてみましょう。
そうなると、月の出の時刻は午前0:00~6:00の間ということになりますね。
電気がなかった昔の人たちにとって、
午前0時過ぎに出てくる月を見るというのは異常なことだったのです。
そんな時間になっても待ち続けるほどの愛情の深さと、
それを裏切られた恨みの大きさ……歌に込められた強い想いを感じませんか?