皆さんこんにちは。
受験ドクターの理科大好き講師、澤田重治です。
百人一首の中で見つけた理科の世界を紹介する第4弾です。
もちろん、今回も中学受験に関連する内容になっていますよ!
わが袖は潮干に見えぬ沖の石の 人こそ知らね乾く間もなし
源頼政の娘である「二条院讃岐(にじょういんのさぬき)」という人がよんだ歌です。
小学1年生くらいのときに、私が初めて覚えた百人一首がこれでした。
我ながら渋いチョイスですよね。
なんでこれだったんだろう?
もちろん、当時は意味なんて全く分かりませんでしたから、
きっと 「なんとなく音が気に入った」 というレベルだったのでしょう。
さて、今回も細かい文法は無視してざっくり歌の意味を説明すると、
『私の袖(そで)は、干潮になっても見えない海中の石のように、
みんなは知らないでしょうが、涙にぬれて乾く間もないんですよ』
という感じでしょうか。
切ない恋心を詠んだ歌――ますます小学1年生の男子には理解不能ですね。
小学6年生でも難しそうなので、今回は「潮の満ち引き」の話だけにしぼります。
➀ 「干潮」や「満潮」って、なんで起こるの?
歌の中に出てくる 「潮干(しおひ)」 は、潮が引いていることを表しています。
つまり、今の言葉で言えば 「干潮(かんちょう)」 のことです。
あらっ? よく見たら、文字の順序がひっくり返っている……
言葉って面白いものですね。
さて、海水面が上がったり下がったりする「潮汐(ちょうせき)作用」ですが、
主に月との位置関係によって起こります。
月と地球との間には、「万有引力」がはたらいています。
ニュートンのリンゴの逸話でおなじみの万有引力ですが、
簡単に言えば、月と地球が互いに引っ張り合っているということなのです。
この、月から受ける引力によって、地球の表面にある海水は月の方へ引っ張られます。
つまり、ものすごく大げさに描くと、こんなイメージですね。
しかし、実際には、次の図の様に、反対側にも海面が上がっているところができます。
月に引っ張られるのなら、月の反対側は、むしろ海面が低くなりそうなものですよね?
では、なぜ反対側も海面が上がるのでしょうか?
その原因は、ズバリ 「遠心力」 です。
② 「遠心力」が生まれる理由
たとえば、下の図のように、お父さんが子どもを回して遊んであげているところを想像してみてください。
二人の腕は、互いに引っ張り合っていますね。
そしてお父さんは、少し後ろに体重をかけてバランスをとっていることに気づくでしょう。
次の図のように、手をつないだ親子を一つの「かたまり」ととらえると、
その重心は、より質量の大きいお父さん側に寄った場所になります。
バランスよく回るためには、この重心を中心に回転する必要があるのです。
そのため、お父さんの体には、背中側に遠心力がはたらきます。
そして、この親子の様子は、そのまま地球と月にもあてはまります。
お父さん役である地球には、背中側、
つまり月とは反対側に遠心力がはたらくのです。
そして、この状態で1日に1回地球が自転しますので、
海面が高くなる「満潮」も、海面が低くなる「干潮」も、
毎日2回ずつ起こります。
本当は、太陽との位置関係によって、満ち引きがより大きくなるときと
小さくなるときがあるのですが……その話はまた別の機会に。
次回もお楽しみに!