皆さんこんにちは。
受験ドクターの理科大好き講師、澤田重治です。
ご存知の方も多いと思いますが、中学受験における「リード文問題」というのは、
小学6年の受験生たちが知らないはずのことをリード文(説明文)で誘導し、
それについて答えさせる問題のことです。
ですから、原則的にはその場で理解して答えるべきものなのですが……
そうは言っても、ある程度の概略だけでも知っている話の方が理解しやすいですよね?
ということで、様々な学校で出題されている「頻出題材」について、
話の核となる重要なポイントだけでもお伝えしていくという
新しいシリーズを始めてみようと思います。
第1回は「半透膜」と「浸透圧」についてです。
「ナメクジに塩をかけるととける話」というと、文系の人にも通じるでしょうか?
(※後述しますが、実際にとけているわけではありません!)
実際の問題では、直接「半透膜」や「浸透圧」という用語が出てくることは稀ですが、
その考え方を理解していないと解けない問題はよく出題されています。
「半透膜」と「エントロピー増大の法則」
まず、「半透膜」というのは、小さい水の粒なら通れるが、食塩などの大きな粒は
通れない……というくらいの、非常に小さい穴があいた膜のことです。
私たちヒトを含め、ほとんどの生物のからだは、細胞という小さな袋の集まりですね。
この細胞の袋を作っている膜のことを「細胞膜」と呼びますが、この細胞膜こそが
半透膜としての性質を持っているのです。
そして、もう一つ理解しておいていただかなければならないのが、
「エントロピー増大の法則」という自然法則についてです。
名前はとても難しいですが、概要を理解するのはそれほど難しくありませんからご心配なく。
これは簡単に言うと、「自由に動ける物質は、できるだけ広がろうとする」ということです。
たとえば、連結された電車の隣同士の車両で、一方はぎゅうぎゅう詰め、
もう一方は一人も乗客がいない……というのは、特別な理由がない限り不自然ですよね?
当然乗客の一部は、すいている隣の車両に移ります。
同じように、たとえば水の粒子と食塩の粒子が合わされば、
均一に広がろうとする = 一様なこさになろうとする
ということなのです。
「浸透圧」の原理
さて、それでは、半透膜をへだてた2つの溶液の濃度が違ったらどうなるでしょうか?
こさを均一にしようとするはたらきが発生しますが、
例えば食塩水の場合であれば、
食塩の粒は半透膜を通り抜けることができません。
すると、半透膜を通り抜けられる水の粒が、
うすい溶液からこい溶液に移動することでこさをそろえようとするのです。
つまり、下の図のようにこい溶液側の水が増えて、水面の高さが合わなくなります。
それはつまり、うすい溶液からこい溶液に向かって、
水圧に対抗するだけの力がはたらいているということになりますね?
この圧力のことを「浸透圧」とよんでいるのです。
初めに触れた「ナメクジに塩」も、実はこの原理で、
からだの外についた塩をうすめるために、
体内から水が抜けてくることでナメクジがしぼんでいく様子を見て
「ナメクジがとけたように見える」というのが正解なのです。
内容的には高校レベルの化学ですが、現象を理解するだけなら
リード文でも導けるので、中学入試でよく出題されています。
原理の概要を知っておくとよいでしょう。
次回も、中学受験で頻出の題材を説明していきます。
どうぞお楽しみに!
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