皆さんこんにちは。
受験ドクターの理科大好き講師、澤田重治です。
小学6年の受験生たちが知らないはずのことを説明文で誘導し、
それについて答えさせるリード文問題の頻出題材を開設する第4弾です。
今回紹介するのは、「ベルクマンの法則」です。
問題文の中に、直接この名前が出てくるものと出てこないものとがありますが、
2021年度入試では駒場東邦中、2020年度入試では成蹊中、
2019年度入試では浦和明の星女子中、2017年度入試では聖光学院中、
古くは2013年度入試で渋谷教育学園渋谷中など、
いずれにしても、大変よく出題されている題材です。
また、2017年度の麻布中では、内容こそベルクマンの法則ではないものの、
まったく同じ考え方のものが、「昆虫の呼吸」の問題として出題されています。
ぜひ、基本を理解しておいてください。
さて、肝心な「ベルクマンの法則」の中身ですが、簡単にまとめると、
「同じ仲間なら、寒い地域に住む動物ほど体が大きい」ということです。
実際の入試では、よくクマの種類と生息場所の関係が問われていますね。
たとえばその「クマ」の仲間の場合、
北海道などに住む「エゾヒグマ」の体長は160~230cm
日本の本州にも生息する「ツキノワグマ」の体長は120~180cm
温暖な地域で生活する「マレーグマ」の体長は100~140cm
というように、高緯度地帯に生息するほど体が大きい傾向があることが分かります。
ホッキョクグマ
ヒグマ
ツキノワグマ
マレーグマ
そして、実際の中学入試の問題では、この事実について問うだけでなく、
「なぜそのような傾向になるのか」という、理由の考察をする出題も見られます。
では、なぜ寒い地域に生息するほど体が大きい種類が有利なのでしょうか?
そのキーワードは、「体積と表面積」です。
たとえば、まったく同じ形の相似なクマがいたとします。
小さい方の体長が120cm、大きい方の体長が180cmとすると、
相似比が2:3ということになりますね。
そうすると、体積比は(2×2×2):(3×3×3)=8:27です。
体の組成(骨や筋肉の割合)も等しいとするなら、
単純に筋肉量も8:27となり、
筋肉で作っている熱の量も8:27と考えることができます。
一方、体温は主に、体の表面から体外へと逃げていきます。
その体表面積の比は(2×2):(3×3)=4:9ですので、
等しい面積あたりの発熱量の比は、(8÷4):(27÷9)=2:3となり、
体長が1.5倍ある大きなクマの方が、小さなクマと比べて
同じ体表面積あたり1.5倍の熱を作り出すことができる計算になります。
おそらく、「寒いから体が大きくなった」のではなく、
「体が大きい方が寒い地域でも生き残りやすかった」というのが本当でしょう。
この「ベルクマンの法則」と、よく一緒に考えられる生物の体に関する法則に
「アレンの法則」というものがあるのですが……長くなりましたので、その話はまたいずれ。
次回も、中学受験で頻出の題材を説明していきます。
どうぞお楽しみに!