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投稿日:2021年09月02日

テーマ: 理科

平年値が変わった?!――2022年度中学入試理科時事問題のタネ②

皆さんこんにちは。
受験ドクターの理科大好き講師、澤田重治です。

2022年度入試で出題されそうな時事問題を学ぶ第2弾――
今回は、10年ぶりに更新された気象庁の「平年値」の変化から
日本の気象の変化を考えます。

例えば、「今年の夏は暑かったのか?」などと考えるとき、
単に今年の平均気温を言われただけでは判断ができません。
それが、自分の住んでいる地域でなければなおさらでしょう。

しかし、「平年と比べて0.5℃高かった」などと言われればよく分かりますね。
そのために、気象庁では比較対象としての「平年値」を発表しているのです。

まずは、大前提となる「平年値」算出の仕組みを知りましょう。

気象庁では、過去30年分の観測データの平均を「平年値」とし、
西暦年の一の位が「1」となる年に、10年ごとに更新しています。
そして、今年は2021年ですので、ちょうど更新されるタイミングでした。
実際には、2021年5月19日から、すでに新平年値が使用されています。

具体的には、

1981~2010年の30年間分の平均値 → 2011~2020年の「平年値」として使用
1991~2020年の30年間分の平均値 → 2021~2030年の「平年値」として使用

ということになり、3分の2にあたる20年間分は同じデータが使われているわけですから、
そんなに大きな数値の変化にはならないはずです。

1981~1990年の10年間分が、2011~2020年の10年分に変わったことで、
平年値にどのような変化が起こったのか……ポイントを見ていきましょう。

【ポイント①】 平均気温の上昇

予想できたことではありますが、地球温暖化の影響がはっきり表れています。
気象庁の分析では、年平均気温の変化を地域別でみると、

0.2℃上昇……沖縄・奄美
0.3℃上昇……北日本・西日本
0.4℃上昇……東日本

なんと、釧路、宇都宮、水戸、館野、千葉の観測点では、0.5℃も高くなりました。

ちなみに、東京の月ごとの平均気温とその平年値の変化を見てみると、

1月:5.4℃(+0.2℃),2月:6.1℃(+0.4℃),3月:9.4℃(+0.7℃),
4月:14.3℃(+0.4℃),5月:18.8℃(+0.6℃),6月:21.9℃(+0.5℃),
7月:25.7℃(+0.7℃),8月:26.9℃(+0.5℃),9月:23.3℃(+0.5℃),
10月:18.0℃(+0.5℃),11月:12.5℃(+0.4℃),12月:7.7℃(+0.1℃)

そして、年平均気温は15.8℃(+0.4℃)となっています。
3月と7月の+0.7℃が目を引きますね。

【ポイント②】 降水量の増加

春の西日本や夏の東日本太平洋側で5%程度減少していますが、
夏の西日本や、秋と冬の太平洋側の多くの地点で10%程度増加していて、
全体としては増加傾向にあるようです。
また、単純な降水量の増加だけでなく、1日の降水量が100mmを越える
大雨の頻度も、多くの地点で増加しているようです。

【ポイント③】 降雪量の減少

積雪計が超音波式からレーザー式に変わったことも影響している可能性が
あるようですが、多くの観測地点で降雪量の平年値が減少しています。
中には30%以上減少しているところもあり、こうなると計器の問題だけではなさそうです。
やはり、気温の上昇に伴って、今までなら雪として降っていたものが
雨として降るようになった……と考えるのが自然なようです。

これらを考え合わせると、地球温暖化の影響によって、
日本は高温多雨の「亜熱帯気候」に近づいているような気さえします。
おそらく、入試で時事問題として出題される場合も、地球温暖化と関連させて
そのような大まかな傾向について聞かれる可能性が高いでしょう。

ポイントを押さえておいてください。

次回も、来春2022年度の中学入試において、
「時事問題」として出題されそうなことを紹介していきます。
どうぞお楽しみに!

理科ドクター