皆さんこんにちは。
受験Dr.の理科大好き講師、澤田重治です。
最近私は、お湯を注ぐだけでできるみそ汁のおいしさに感動しました。
従来のインスタントみそ汁は、具だけが乾燥した状態になっていて、
みそや調味料は、別の小袋に入ったものをお湯に溶かす形でしたが、
最新のみそ汁はすべてがフリーズドライになっていて、
本当にお湯を注ぐだけで完成するんです。
しかも、インスタントとは思えないほどおいしい!
こんな便利な製品を作り出している「フリーズドライ」という技術、
ちょっと気になりますよね?
しかも、最近、中学受験の理科でも時々見かける難しいグラフと
密接に関係した技術なのです。
まずはその、入試でも出されているというグラフを見てください。
これは、水の状態変化が起こる温度と圧力の関係を示したものです。
小学校でも、水の状態変化については、0度で「固体⇔液体」の変化、
100度で「液体⇔気体」の変化が起こると教わります。
しかし、これはあくまで1気圧の場合であって、
圧力の条件が変わればその常識はくつがえされる……
そういうことをこのグラフから読み取らせる問題が、
中学受験でも実際に出題されているのです。
例えば気圧が低い高地などでは、100度に達していなくても沸とうします。
そして、もっと気圧が低くなり、グラフの☆印のあたりまでくると、
マイナスの温度でも固体(氷)からいきなり気体(水蒸気)に変化します。
いわゆる「昇華」ですね。
この原理を利用したのが「フリーズドライ」という技術なのです!
「フリーズ」=冷凍
「ドライ」=乾燥
という意味ですが、まさに「冷凍」⇒「乾燥」という手順をふみます。
具体的には、まず食品を冷凍します。
このとき、氷の結晶が大きくなると食品の繊維などを壊してしまい、
食感が悪くなりますから、短時間で一気に凍らせるのがおいしくするコツです。
そして、冷凍した食品の周りから空気を抜いて気圧を下げ、
真空状態に近付けていきます。
そうすると、下のグラフのように温度と圧力が変化して、
食品の中に含まれていた凍った水分が、一気に気体となって抜けていきます。
水分が抜けるのですから、結果的に乾燥した状態になるわけですね。
このような方法で乾燥させると、
高温にして気化させたわけではないので食品の質は変化しませんし、
また、自然乾燥と違って短時間でできるので、
腐りやすい食品でも乾燥させることが可能になります。
そして、失われているのは水分だけですから、
湯や水を加えることで、あっという間に元の状態に戻すことができるというわけです。
すでに生活の一部となった感のあるフリーズドライは、
正に身近な科学と呼ぶにふさわしい技術だったのですね。
次回も、楽しくてためになる「身近な科学」を紹介していきます。
どうぞお楽しみに!