皆さんこんにちは。
受験ドクターの理科大好き講師、澤田重治です。
皆さんは「寒剤(かんざい)」という言葉を知っていますか?
中学受験に登場する一番有名な寒剤は「氷と食塩」を混ぜるもので、
だいたい通常は-18℃くらい、理論的には-21℃くらいまで温度が下がります。
よく、手作りアイスクリーム体験などでも使われていますね。
使用しているのが、どちらも身近で手に入れやすいものだからでしょう。
それにしても、ただの氷が塩と混ぜただけでそんなに温度が下がるなんて
よく考えると不思議ですよね?
先日の授業の際に、ある生徒にこの寒剤の話をしたときには、
「じゃあ、その氷ってカチカチになるの?」と聞かれました。
-18℃まで下がると言われれば、そう思うのも無理はありません。
でも、事実はその真逆。
「ううん。氷っていうのはね、塩をかけると融けやすくなるの」
「えっ?!」
「氷が融けるから温度がさがるんだよ」
「?????????」
うーん、そうなりますよね。
気持ちはとてもよく分かります。
この仕組み、全部説明すると難しい話になり過ぎるのですが、
小学生にも理解できる範囲で、
そして、中学受験のリード文問題などで出てくる範囲で説明してみましょう!
① 食塩が水に溶けると温度が下がる
物質には、水に溶けたときに熱を出すものと、熱を吸収するものとがあります。
(このときに出入りする熱のことを「溶解熱」といいます。)
硫酸などは水に溶かす(水でうすめる)と熱を出す代表的な物質ですね。
それに対して食塩は、わずかですが水に溶けたときに熱を吸収する性質を持った物質です。
この食塩が、氷の表面で融けた少量の水に溶けることで、周囲から熱を吸収します。
熱を吸収するということは、周囲は熱をうばわれるわけですから温度が下がるのです。
ただし、ここで吸収する熱はごくわずかで、これだけでは-18~-21℃にはなりません。
② 食塩が水に溶けると、水の凝固点(こおる温度)が下がる
これは、中学入試のリード文問題でもときどき扱われている題材です。
正式には高校配当単元で、「凝固点降下(ぎょうこてんこうか)」とよばれる現象です。
普通なら0℃でこおり、0℃で融けるのが水(氷)なのですが、
食塩が溶けて食塩水になると、もっと低い温度でなければこおらなくなるのです。
そして、食塩水の濃度が高ければ高いほど、その温度は下がります。
そうなると、氷の表面が融けてできた水に食塩が溶けることで、
水は0℃ではこおらなくなり、すでに表面が融け始めている0℃の氷も
こおったままではいられなくなります。
こうして、氷の表面がどんどん融けていくのです。
③ 氷は融けると周りから熱をうばう
同じ水なのに、温度によって「氷(固体)」「水(液体)」「水蒸気(気体)」と
様々な姿になりますね。
これを「状態変化」といいます。
目に見えないくらい小さな水の粒(水の分子)は、
状態変化をすると動き方が変わります。
イメージとしては、
気体…ビュンビュン飛び回っている
液体…お互いを押しのけながらウヨウヨ動き回っている
固体…その場にとどまって細かく振動している
という感じです。
今まではその場で振動しているだけだった氷(固体)は、
融けて水(液体)になると動き回らなければならなくなるので、
より多くのエネルギーが必要になります。
そこで、そのエネルギーを「熱」という形でアイスクリームの原料などのように
寒剤に触れている「周囲のもの」から吸収するのです。
ここで、温度が下がっているのは熱をうばわれた「アイスクリーム」などであって
「氷(水)」自体ではないことに注意してください。
温度が下がっているのに氷がカチカチにならないのはそのためなのです。
次回も、楽しくてためになる「身近な科学」を紹介していきます。
どうぞお楽しみに!