皆さんこんにちは。
受験Dr.の理科大好き講師、澤田重治です。
みなさんは、「ヤドリギ」という植物を知っていますか?
「宿り木」の名前の通り、他の樹木に寄生して
水や栄養分をもらって生きる常緑樹です。
実は先日、山中湖に行ってきたのですが、
偶然そのときに、ヤドリギを発見したのです。
すっかり葉がなくなった木の中に、不自然に丸まった緑が見えると思います。
これがヤドリギです。
西洋では、魔除けの効果があるとされ、幸運をもたらしてくれるのだとか……。
私にも何か良いことがあるでしょうか?
嫌われ者の寄生生物たち
ヤドリギ以外にも、生物界には寄生する種類がいくつか見られます。
・中学受験でも出たことがある、アオムシに寄生する「アオムシコマユバチ」
・地中で暮らすセミの幼虫などに寄生して草のように生えてくるキノコの仲間「冬虫夏草」
・サバやイカなどに寄生して食中毒の原因になる「アニサキス」
あたりは有名な寄生生物ですね。
アオムシコマユバチや冬虫夏草は、寄主(寄生された生物)が死んでしまいますし、
アニサキスは人間に害を及ぼしますから、いずれもあまり良い印象はありません。
しかし、なぜか「ヤドリギ」だけは、西洋でも日本でも、
昔から縁起物として扱われていたようです。
なんだか不思議ですね。
おそらくその理由は、寄主である木が死なないこと、
葉のない冬の時期にも緑を見せてくれること、
そこから連想される生命力の強さ……というところでしょうか。
ヤドリギの生き残り戦略
さて、特殊な植物であるヤドリギには、
やはり子孫を残すための特別な戦略がありました。
まず、寄主である樹木は一般的に落葉広葉樹で、ヤドリギは常緑樹です。
そのため、先ほどの写真のように、冬期はとても目立ちますね。
そしてこの冬(11~12月ごろ)に、ヤドリギは赤い実をつけるのです。
この実は、エサの少ない冬場には鳥にとって貴重な栄養源ですから、
緑の丸いかたまりを目印に集まってくるのでしょう。
この時期も絶妙ですよね。
そして、ヤドリギの実の内部はネバネバしていて、
消化されずにフンとして排出された種が枝につきやすくなっているのです。
うまく枝にくっついた種は、そこから寄主である木の枝に向かって根を伸ばします。
実に合理的な仕組みだと思いませんか?
ちなみに、鳥がしたフンは、とまっていた枝から下に落ちていくので、
ヤドリギは木のてっぺんあたりにはまったく見られません。
こんな風に、与えられた話から因果関係を考える訓練も、
中学受験に向けた大切な要素となります。
お子さんにヤドリギの写真を見せて、
なぜ一番高いところに生えていないのか考えさせてみてはいかがでしょうか?
次回も、楽しくてためになる「身近な科学」を紹介していきます。
どうぞお楽しみに!