皆さんこんにちは。
受験Dr.の理科大好き講師、澤田重治です。
今回のブログのタイトル「瞳と口と鼻の穴」って、何のことだか分からないですよね?
実はこの3つには、「顔にある」ということ以外に大きな共通点があるのですが……
何だか分かりますか?
正解は「実体がないこと」です。
「さわることができない」と言い換えてもよいでしょう。
たとえば「鼻の穴(=孔)」という物体はありませんよね?
「小鼻」とか「鼻翼(びよく)」とかと呼ばれる部分があるからそこにあいた「穴」が見えるわけで、
カエルの解剖実験などをしたとしても、「鼻の穴」にふれることはできません。
口も同様で、「くちびる」や「歯」や「上あご」などにふれることはできますが、
ぽっかりとあいた空間にはふれることができません。実体がないのです。
植物の葉の裏側に多く存在する「気孔(きこう)」なども同様で、
周囲の「孔辺細胞(こうへんさいぼう)」にふれることはできますが、
「気孔」は実体のないただの穴なのでふれることができないのです。
「瞳」というものはない?!
ここまで読んで、「なるほど」と納得しかけてから、
「いや、でも『瞳(ひとみ)』というものはちゃんと実体があるんじゃない?」
と思った方もいるのではないでしょうか。
ところが、「瞳」も実はただの穴で、実体がないのです。
「瞳孔(どうこう)」と呼ぶことがあるのもそのためです。
もう少し詳しく説明していきましょう。
黒目の部分って、拡大してみるとこんな感じですよね。
黒目とは言うものの、本当に黒いのは中心部分だけで、
日本人の多くは、その周りの部分が茶色っぽくて、筋状の模様が見られます。
この中心の黒い部分が「瞳」で、周囲の模様がみられる部分は「虹彩(こうさい)」といいます。
それにしても、「虹の彩(いろどり)」だなんて、名前をつけた人は相当なロマンチストですね。
逆さまにして振っても、私の中からは出てこない発想です。
目のつくりを知ろう
では、この虹彩の部分は、いったいどうなっているのでしょうか?
下の図をご覧ください。
人間の目には「水晶体」または「レンズ」と呼ばれる部分があって、
凸レンズでスクリーンに像が映るように、網膜上には像が映ります。
その情報を網膜の神経が感じ取り、視神経を通して脳に送ることで景色が見えるのです。
このレンズ(水晶体)の前に「虹彩」があります。
図のような断面図では上下に分かれて見えますが、本当は円形につながっています。
それが黒目の周辺部分、模様の見える茶色っぽい部分になっています。
そして、虹彩に囲まれた何もない部分こそが「瞳(ひとみ)」なのです。
この虹彩は、顕微鏡やカメラについている「しぼり」と同じ役割をしていて、
レンズの中に入ってくる光の量を調節しています。
つまり、明るいところでは瞳を小さくしてレンズに入る光の量を減らしますし、
暗いところでは瞳を大きくしてたくさんの光が入るようにするのです。
夜寝る前に部屋の電気を消すと、しばらくは真っ暗で何も見えませんが、
少しすると目が慣れてきてぼんやりと見えるようになりますね。
あれは、正確には目が慣れたのではなく、虹彩が広がって瞳を大きくしたために、
実際に網膜に像を作っている光の量が増えているのです。
凸レンズの問題で、レンズの一部を黒い紙で隠すというものがありますが、
スクリーンに映る像は暗くなるだけで、けっして欠けることはありません。
これは、虹彩が瞳を小さくしても、視野がせまくはならないのと同じ原理なのです。
好きな人を見ると……
余談ですが、心理学の実験によると、同じ明るさの部屋であっても、
人は興味のある話を聞いているときには虹彩が開き、瞳が大きくなるのだそうです。
きっと、より多くの情報を得たいという無意識の心理が虹彩を動かし、
目の中に入る光の量を増やそうとするのでしょう。
ということは、話している相手の瞳が大きくなっていたら、
自分の話に興味を持ってくれているということになります。
これを応用すれば、自分と話しているときの相手の瞳の大きさを見ることで、
片思いの人が自分のことをどう思っているかが分かるかもしれませんよ!
まあ、好きな人の目をじっとのぞき込む勇気があればの話ですが……。
ということで、今回も長文になってしまいました。
最後までお読みいただきありがとうございます。
次回もまた、楽しくて中学受験のためになる「身近な科学の話」をお届けします。
どうぞお楽しみに!