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投稿日:2024年05月20日

テーマ: 理科

時事問題で狙われる?「熱中症特別警戒アラート」運用開始

こんにちは。
受験Dr.の理科大好き講師、澤田重治です。

環境省・気象庁の新たな取り組みとして、2024年4月24日から
熱中症特別警戒アラート」の運用が開始されました。
つい最近のニュースですので、記憶に新しい方も多いと思います。

あれ? 前からなかったっけ?
と思った方も、中にはいらっしゃるかもしれませんね。
おそらくそれは、「特別」の文字が入っていない、「熱中症警戒アラート」です。

熱中症の男の子

従来の「熱中症警戒アラート」は、
暑さ指数が33℃以上になると予想されるときに発表していましたが、
今回の「熱中症特別警戒アラート」は暑さ指数35℃以上での発表となります。

なお、元々の「熱中症警戒アラート」も今まで通りに運用されますので、
新しく別の物になったのではなく、
もう一段階上のアラートが新しく設けられたということです。

ただし、従来通りの「熱中症警戒アラート」の方は、
全国を58に分けた府県予報区等を単位としていましたが、
新設される「熱中症特別警戒アラート」の方は都道府県単位です。

また、従来の「熱中症警戒アラート」の方は、
対象区内のいずれかで日最高暑さ指数33以上と予測した場合に発表しますが、
新設される「熱中症特別警戒アラート」の方は、翌日の日最高暑さ指数が、
都道府県内のすべての観測地点で35度以上と予想された場合に発表されます。

名称は「特別」が入っているかいないかだけの違いなのに、
発表基準や区分けの仕方、発表するタイミングなどは違うのですね。

 

 中学入試への出題

中学入試に時事問題として出てくるのか?
気になりますよね。

ちなみに、従来の「熱中症警戒アラート」の方は、
2020年から関東甲信地方を対象に実験的に運用し始め、
2021年からは対象を全国に広げての本運用となりました。

その当時、中学入試への影響はあったのでしょうか?
結論としては「Yes」です。

まず、関東甲信地方で試験運用がなされた直後の2021年度入試では、
たとえば慶應湘南藤沢中学の入試で、
次のような形でこの「暑さ指数」についての問題が出ていました。
図や表、設問は省略して、冒頭の問題文だけ紹介します。

【2021年度 慶應湘南藤沢中 理科】
2020年は、東京都心で8月の猛暑日が観測史上最多を記録したため、
暑さ指数が注目されました。
これは、人体と空気との熱のやりとりを反映した数値です。
図1は、黒球温度・乾球温度・湿球温度を測定するための観測器であり、
表1は関東地方で観測した3日分のデータと、
これらから算出した暑さ指数(℃)です。
以下の問いに答えなさい。

本運用が始まった2021年の夏が過ぎ、
初めて迎えた翌2022年度入試でも、
この「熱中症警戒アラート」や「暑さ指数」自体を題材にした入試問題は
いろいろな学校で出題されていました。

そして、その多くの問題に共通しているのは、
発表基準となる暑さ指数の計算が、
「湿球温度」の値を重視していることです。

今回、新たにできた「熱中症特別警戒アラート」について出題される場合も、
おそらく「湿球温度を重視して暑さ指数を求めている」という点は重視されるでしょう。

 

 「暑さ指数」とは?

実際、暑さ指数は以下の式で計算します。

暑さ指数 = 0.2×〔黒球温度〕 + 0.1×〔乾球温度〕 + 0.7×〔湿球温度〕
・黒球温度…黒色にぬった銅板で作った球の中心に温度計を入れて測定した空気の温度
・乾球温度…温度計を用いて測定した空気の温度 (一般的に「気温」と呼んでいるもの)
・湿球温度…水で湿らせたガーゼを巻いた温度計で測定した空気の温度

乾湿球湿度計の使い方については、中学受験生はみな学んでいますので、
乾球温度や湿球温度のことは分かっていると思います。
湿度が低いほどガーゼの水が蒸発し、その際に気化熱をうばうので、
湿球温度は低く観測されるのでしたね。

聞き慣れない黒球温度というのは、
上記の通り放射熱を吸収しやすい黒い球の内部の温度ですから、
天気が良く、直射日光が強いときに温度が上がります。

乾湿球湿度計

そして、それらの温度に、
それぞれ「0.2」「0.1」「0.7」という指数をかけて足していますね。
この指数は、それぞれの割合を表しています。

つまり、この計算式が意味しているのは、
直射日光の影響を2割、一般的な気温の影響を1割、
湿度の影響を7割の割合で重視しているということなのです。

言い換えれば、天気が良くて日差しが強くても、実際の気温が高くても、
湿度が低くて湿球温度が下がるのであれば熱中症のリスクは少ない
と判断しているのです。

今回も、実際に入試で出題される場合には、必ずここが重要なポイントになります。
よく理解しておいてくださいね。

次回もまた、楽しくて中学受験の役に立つ、身近な理科の話をお届けします。
どうぞお楽しみに!

理科ドクター