メニュー

投稿日:2024年06月25日

テーマ: 理科

中学入試重要用語「偏西風」ってジェット気流とはちがうの?

こんにちは。
受験Dr.の理科大好き講師、澤田重治です。

中学入試で気象の問題を扱っていると、必ず出会うのが「偏西風」という言葉です。
皆さんも、おそらく名前は聞いたことがあるでしょう。
そして、何となく「一年中吹いている西風」という認識なのではないでしょうか。

先日、授業中に生徒から、「偏西風とジェット気流ってちがうの?」という質問を受けました。
とても良い質問に感心したので、今回はその話をしたいと思います。

 

 まずは「偏西風」の話

偏西風の話といっても、今回は「偏西風の吹いている高さ」に
注目した話をしていきます。

 

偏西風そのものの原理(発生の原理)については、
以前のブログに詳しく書いたことがあるので、
↓ ご興味の方は、ぜひこちらをご覧ください。
日本の天気は西から変わる~身近な科学の話⑰【中編】

イラスト

さて、偏西風という言葉の意味を調べてみると、
「地球の中緯度付近の上空に一年中吹く西寄りの風」
というような曖昧な表現になっていることが多いようです。

実は、広い意味での「偏西風」となると、
天気の変化が起こる「対流圏」に吹く風ばかりでなく、
その上の「成層圏」や「熱圏」に吹く風まで含むこともあるようなので、
あまり限定したくないのでしょう。

一般的には、偏西風は対流圏の上層を吹く風としているので、
上空5000~12000m程度というのが妥当な答えだと思います。

 

 「対流圏」 「成層圏」 「熱圏」

先ほどの文章の中で、「対流圏」・「成層圏」・「熱圏」という
ちょっと難しい言葉がでてきてしまいましたので、
少し解説しておきたいと思います。

地球表面の大気のある部分を「大気圏」といいます。
この大気圏の厚さはおよそ100kmと言われていますが、
だんだん空気がうすくなって宇宙空間へとつながっていくので、
どこまでが大気圏なのかははっきりしないようです。

私たちが生活する地表付近の天気の変化は、
その大気圏の中でも地表からわずか10~12km程度の範囲で起きていて、
この部分を「対流圏」と呼んでいます。

対流圏の上では空気の対流がほとんど起きないため、
気体がその種類ごとに層を成すように積み重なっていきます。
ここを「成層圏」と呼び、地上およそ10~50kmの範囲になります。
有名な「オゾン層」も、この成層圏にあります。

成層圏のさらに上、地上50~80kmあたりを「中間圏」といいます。
この範囲では上空ほど寒くなっていて、やはり対流が起こっています。

その上の「熱圏」は、太陽から届く紫外線の影響で大気が熱されて、
なんと数千度にもなっているのだそうです。
だから「熱圏」というのですね。

 

ちなみに、先日、太陽フレアの影響で、
日本でも観察できたことが話題になったオーロラは、
中間圏の上部から熱圏にかけて光っています。

オーロラのイラスト

 

 結局「ジェット気流」って何?

一般的には、水平方向の空気の動きのことを「風」、
垂直方向の空気の流れのことを「気流」と呼ぶので、
名前だけ見るとまったくの別物のように見えますが……

実は、偏西風の一部が「ジェット気流」なのです。
どういうことか、もう少し詳しく説明していきますね。

対流圏の上部、成層圏との境目付近に吹く偏西風は、
その境目に近づくほど速くなる性質があります。
そして、一番速いところでは秒速100m、
つまり、時速360kmにも達することが分かっています。

ジェット機は、上空10000m(10km)付近を飛ぶことが多く、
この特に速い偏西風の影響を受けやすいことから
「ジェット気流」という名前がつけられました。

実際、東京からニューヨークへ飛行機で行く場合の所要時間は
ジェット気流に乗れるので約12時間半程度ですが、
ニューヨークから東京へ戻る場合には
ジェット気流を正面から受けるので約14時間もかかるのです。
こんなに影響があるのですね。

 

次回もまた、楽しくて中学受験の役に立つ、身近な理科の話をお届けします。
どうぞお楽しみに!

理科ドクター