こんにちは。
受験Dr.の科学大好き講師、澤田重治です。
突然ですが、皆さん、「花粉症」は大丈夫でしょうか?
私は毎年スギ花粉に悩まされています。
最近は秋にも花粉症の症状が出ることが多いので、
ブタクサか何かの花粉症を新たに発症したのかもしれません。
ああ目がかゆい……
同朋の皆さん、辛いですが負けずに頑張りましょう!

スギだけじゃない花粉症
このように、「花粉症」と聞くとスギ花粉を連想する人が多いと思いますが
実は数えきれないほどの種類の植物が、花粉症の原因となっています。
代表的な花粉症の原因を、関東での主な飛散時期と併せて列記してみます。
◯ ハンノキ(被子植物双子葉類カバノキ科)……1~6月
◯ スギ(裸子植物スギ科)……2~4月
◯ ヒノキ(裸子植物ヒノキ科)……3~5月
◯ シラカンバ(被子植物双子葉類カバノキ科)……4~6月
◯ カモガヤ(被子植物単子葉類イネ科)……5月~6月(※秋咲きは8月下旬~9月)
◯ ブタクサ(被子植物双子葉類キク科)……8月~10月
◯ ヨモギ(被子植物双子葉類キク科)……8月~10月
◯ カナムグラ(被子植物双子葉類アサ科)……8月~11月

特に、カモガヤを代表とするイネ科の花粉は種類も多く、
様々な種類の飛散期間を合わせると、4~10月にかけて飛散時期が続きます。
なかなかやっかいですね。
花粉症を起こす植物の条件
花粉症は、空気中に飛散した花粉によって起ります。
つまり、原則的には、花粉を風で運ぶ「風媒花」でしか起こりません。
そうなると、スギやヒノキなどの裸子植物や、
ハンノキやシラカンバなどのカバノキ科は「樹木」ですし、
イネ科の植物はことごとく風媒花なので当然なのですが……
ブタクサやヨモギのような「キク科」は不思議な感じがしますね。
もちろん、中学入試によく出るキク・タンポポ・ヒマワリなど、
キク科の植物はとても進化した植物で、原則的には虫媒花です。
しかし、ブタクサとヨモギは例外的に風媒花という変わり者なのです。
ヨモギなんて、進化の過程でわざわざ虫媒花から風媒花に逆戻りしたらしいですよ!
草餅の材料にも使われているヨモギは日本の在来種ではありますが、
原産地は中央アジアの乾燥地帯で、あまり虫が生息しない地域だったようです。
そのため、風で花粉を運ぶ方が効率的だったのですね。

スギ花粉症の人はトマトもダメ?!
花粉症と同じアレルギー症の一種に、「口腔(こうくう)アレルギー」というものがあります。
これは、食物にふくまれる成分が口の中の粘膜に触れてアレルギーを起こすもので、
多くの場合、唇やのどの奥にかゆみや違和感などの症状が現れます。
そしてこの口腔アレルギー、花粉症とも関係があるようなのです。
これは、花粉症のアレルゲン(アレルギーを引き起こすもととなる物質のこと)と、
食物にふくまれるたんぱく質の構造が似ているために起ると考えられています。
スギの花粉症の人は生のトマトで症状が出ることがあるそうですよ。
その他にも、ハンノキ・シラカンバなどカバノキ科の花粉症の人は、
バラ科の果物(リンゴ・ナシ・イチゴ・モモ・サクランボ・ビワなど)に注意が必要です。
カモガヤ・ハルガヤガヤなどのイネ科の花粉症の人は、
ウリ科の果物(メロン・スイカなど)に注意が必要です。
ブタクサ・ヨモギなどのキク科の花粉症の人は、
ウリ科の果物(メロン・スイカなど)に加えて、
セリ科の野菜(セロリやパセリなど)にも注意が必要です。

このように、花粉症や口腔アレルギーのことを考えるときも、
分類上近い植物には似たような傾向があります。
ただ花粉症に苦しめられるだけでなく、
こんな切り口で「生物の分類」を考えてみると、
中学受験に役立つ知識に興味を持って取り組めるかもしれませんね。
次回もまた、楽しくて中学受験の役に立つ、身近な科学の話をお届けします。
どうぞお楽しみに!