皆さんこんにちは。
受験Dr.の理科大好き講師、澤田重治です。
先日、2月10日には、東京23区内でも一時うっすら積雪するほどの降雪がありました。
1~5cmの降雪(積雪ではない)の予報で「大雪警報」が発令されてしまうのですから、
雪国にお住まいの方には笑われてしまいそうですね。
その意味では、東京がいかに雪に弱いかを痛感する出来事でもありました。
しかし、予想されていたこととはいえ、都内私立高校の入試日にあたったこともあり、
実際に電車が止まるのではないかとヒヤヒヤされた方は多かったかもしれません。
そういえば、私も昔、自分自身の受験当日に雪が降ったことがありました。
私自身は入試のことで頭がいっぱいだったので、
電車が動いているかどうかなんて全く頭にありませんでしたが、
入試に付き添ってくれた母親はずいぶん気をもんだことでしょう。
中学受験と新しい気象用語
近年、地球温暖化の影響が疑われるような異常気象が多発しています。
そして、地球温暖化を含む環境問題は、
中学受験の理科では昔から頻出事項となっています。
たとえば気象用語としても、豪雨災害をもたらす原因として、
一昔前には「ゲリラ豪雨」、ここ数年は「線状降水帯」という用語を書かせる問題が
実際に多くの学校で出題されています。
「大雪が降るのは寒くなるのが原因だから、温暖化とは関係ないのでは?」
という声も聞こえてきそうですが、
地球全体での大気の循環によって強い寒気が入ってきているのだとすると、
温暖化によるバランスの変化が原因という可能性もあるのです。
そうなると、「線状降水帯」の次に狙われるのは、雪を降らせる
「南岸低気圧」や「JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)」かもしれません。
東京に雪を降らせた「南岸低気圧」
冬は乾燥した晴天になりやすい関東地方ですが、
2月10日には、なぜ雪が降ったのでしょうか?
その真犯人が「南岸低気圧」とよばれるものでした。
「南岸低気圧」はその名の通り、日本列島の南岸、
つまり太平洋側を通り抜ける低気圧で、
冬に降水量の少ない太平洋側に雨や雪を降らせることが知られています。
低気圧は、中心に向かって周囲から風を吸い込む性質があるので、
南岸低気圧は北から冷たい空気(寒気)を、
南からは温かく湿った空気を引き寄せてきます。
その結果、太平洋上から吸い込まれた水蒸気が寒気に触れて冷やされ、
雨や雪となって降ってくるという仕組みです。
日本海側に大雪を降らせる「JPCZ」
以前から天気予報などではよく耳にしている「南岸低気圧」と違って、
最近名前が出始めたばかりなのが「JPCZ」です。
JPCZというのは「Japan sea Polar air mass Convergence Zone」の略で、
日本語では「日本海寒帯気団収束帯」と呼ばれています。
また、分かりやすくするために「線状降雪帯」と呼ぶこともあるようです。
このJPCZは日本海側に大雪をもたらす原因になると考えられています。
冬の季節風であるシベリア気団からの北西の風が、
北朝鮮にある白頭山や周囲の山脈で2つに分かれ、
それが再びぶつかったところに乱層雲(雨雲・雪雲)が線状にできるのです。
ただの乱層雲ならそれほどの大雪にはならないのでしょうが、
このJPCZのライン上には「カルマン渦」とよばれる小さな渦ができることがあり、
これが小型の台風のようになるのです。
大雪を降らせる台風なんて……考えるだけで恐ろしいですね。
線状降水帯や南岸低気圧に比べると、
まだまだ名称が浸透していない「JPCZ」ですが、
日本海側での大雪被害が度々起こるようであれば、
今後、中学受験でも出題されるようになるかもしれません。
選択肢があれば選べる程度には覚えておいた方が良いでしょう。
次回も、楽しくてためになる「身近な科学」を紹介していきます。
どうぞお楽しみに!