新年明けましておめでとうございます。
受験Dr.の理科大好き講師、澤田重治です。
本年もどうぞよろしくお願い致します。
というわけで、今回は「お年玉」ならぬ「落とし球」というダジャレから、
物体の落下運動について考えていきたいと思います!
一定の割合で速度が増していく運動
鉄球を手に持って持ち上げてから静かに放すと、
地球の重力に引かれて鉄球は落下していきます。
当たり前ですね。
このように、地球に引かれる力だけで自然に落下する運動のことを
理科の世界では「自由落下」といいます。
この名前、どこかで聞いたことありませんか?
遊園地などにある垂直落下式のアトラクションですね。
少しの時間ですが、名前の通り「自由落下」をさせるわけです。
自由落下中は無重力状態を体験できますので、
宇宙旅行に興味のある方は試しに乗ってみてはいかがでしょうか。
さて、話がそれたので元に戻しましょう。
物体を自由落下させると、その物体の速度は上がり続けます。
物体の速度が1秒間あたりどれくらい速くなるのかを「加速度」といい、
地球上では1秒間あたり約9.8m/秒ずつ速くなることが分かっています。
また、一定の割合で加速する運動のことを「等加速度運動」といいます。
つまり、自由落下の場合には、手を離した瞬間の速度は0m/秒ですから、
1秒後の速さは約9.8m/秒、2秒後の速さは19.6m/秒ということです。
この関係をグラフで表すと次のようになります。
このように、縦軸を速度v(velocityの略)、横軸を時間t(timeの略)にして
関係を表したグラフのことを「v-tグラフ」といいます。
ちなみに、縦軸の「速度」は何で「s(スピード)」じゃないの? って思いましたよね?
実は、スピード(speed)は「速さ」、ベロシティー(velocity)は「速度」と区別していて、
理科の世界ではちょっと意味が違うのです。
ちゃんと説明すると、
「速さ」は「向き」の要素が含まれていないもの、
「速度」は「向き」の要素が含まれているもの、ということなのですが……
この話は難しいので、中学校で学習するのを楽しみにしていてください。
10秒間で何m落下する?
空気抵抗の影響がなければ、
重さの違う物体であっても同じ速さで落下する……
かの有名なガリレオ・ガリレイが
ピサの斜塔で行ったと言われている実験です。
例えば雨粒が1000メートル以上落下してきたとしても、
目に見えないほどの速度にはならないわけですが、
重さのある鉄球で、比較的短い距離の落下なら、
空気抵抗の影響を無視して考えてもよいでしょう。
ということで問題です。
鉄球を自由落下させたら、10秒間で何m落ちるでしょうか?
さて、困りましたね……
算数で使っている「速さ」の計算では、基本的に速度が一定です。
でも、落下運動はずっと加速していますので、いつもの公式が使えません。
では、どうすれば落下した距離が分かるでしょうか?
実は、ここで「v-tグラフ」が役に立つのです。
例えば、自由落下で0秒後~3秒後に落下する距離は、
下の図の斜線部分の面積になります。
これなら、落下距離は三角形の面積の公式を使って求めることができます。
3×29.4÷2=44.1(m)
たった3秒間で、44mも落ちるんですね!
では、先ほどの問題のように「10秒間」だったらどうなりますか?
グラフを延長した様子を想像しながら考えてみてくださいね。
1秒間に約9.8m/秒ずつ速くなりますから、10秒後の速度は
9.8×10=98(m/秒) となります。
これが面積を求める三角形の高さで、底辺は10秒間ですから、
10×98÷2=490(m)
なんと! たった10秒間で、
東京タワー(高さ333m)の約1.5倍もの高さを落下することになります!
この計算は難しいですし、理科の授業では習いませんが、
最近は中学入試でもこの計算をさせる学校が増えてきています。
発展的なリード文問題が出題されるような学校を受験する人は、
念のため押さえておくとよいでしょう。
次回もまた、楽しくて中学受験の役に立つ、身近な理科の話をお届けします。
どうぞお楽しみに!