こんにちは。受験ドクターのRS講師です。
いつも算数のことばかり書いているので、たまには理科のことも記事にしてみようかと思いまして、今回から何回かに渡って、「てこ」のお話です。
「てこ」は、苦手にしている人が多い単元です。なぜか?
てこの問題では、「回転力」というものを考えるのですが、これがちょっとわかりにくいのです。「おもり」や「てこの長さ」は目に見える具体的な量ですが、回転力は目に見えません。「回転力」とは「g」を単位とする具体的な力のことではなく、数字の積だけで表された「架空」の数量です。
これがてこの問題を分かりにくくしています。
上のてんびんの釣り合いを考えてみましょう。
この問題を解くときに、お子さんに「支点はどこ?」と聞いてみて下さい。
間違いなく,天井と棒をつなぐ、C点と答えると思います。
別に間違っているわけではありません。ただし、これは具体的な「道具」として、てこ(てんびん)を見た場合に限るという条件がつくのです。
例えば、「道具としての栓抜き」では、支点を図で示したところ以外を答えると×になります。
しかし、純粋な計算問題と見た場合、「支点はどこでもよい」というのが正解です。どこでもよいというのは、本当にどこでもよくて、棒上の一点ですらなくてもOKなのです。
考えをシンプルにするために、棒の重さは0gとして、実際に支点はどこでもよいということを確認してみたいと思います。
回転力は、回転の中心(支点)から「どれだけ離れた所に」、「どれだけの力がかかるか」をかけたものでした。
従って、支点にどれだけ重たい重りを下げていても、距離がゼロであれば、回転力はゼロということになります。
この問題では、天井は50gと25gの重りを支えているので、75gの力がかかります。
(1)Aが支点の場合
点Cに上向き(反時計回り)、Bに下向き(時計回り)の回転力が発生していると考えます。
反時計回り…75g×10cm=750
時計回り…25g×30cm=750
(2)Bが支点の場合
点Cに上向き(時計回り)、Aに下向き(反時計回り)の回転力が発生しています。
時計回り…75g×20cm=1500
反時計回り…50g×30cm=1500
(3)支点を棒の外に設定してみた場合
棒がつながっていないので、実際にはこのような釣り合い方はしていませんが、回転力はあくまで「架空」の数量。発想は自由です。
点AとBに反時計回り、点Cに時計回りの回転力が発生していると考えることができます。
時計回り…75g×30cm=2250
反時計回り…
50g×40cm+25g×10cm=2250
(1)〜(3)とも時計回り、反時計回りの回転力が釣り合っていることおわかりいただけたでしょうか。
てこの問題で、「あれ?これ解けない?」と思ったときの対処法のその①がこれ。
支点を決めつけてませんか?ということなのです。
では、このテクニック、どんな場面で使えるのでしょうか?
回転力は支点には発生しない
このことを利用すると、支点に設定されたところは、どんなおもりがぶら下がっていようが関係なくなるということです。
次の問題で練習してみましょう。
〈問題〉
重さを無視できる長さ60cmの棒を、図のように2本のバネばかりを使って天井からさげ、棒の両端に重りをつるしたところ、棒は水平になって釣り合い、バネばかりイは50gを指しました。
アは何グラムを指しますか。
では、解いていきます。
ポイントは「支点をどこにするか?」です。
これは、「重さのわからないところ」が正解です。
重さのわかっているバネばかりイを支点にしてしまうと、アもxも重さがわかっていませんから、未知数が2カ所あるような虫食い算になってしまい、逆算が出来ません。
そこで、重さがわかっていない点D、または点Bを支点にすれば、未知数であるということを気にせずに式を作ることができます。
今回は、点Dを支点にしてみましょう。
支点Dとすると、この棒の釣り合いは、
点Aに下向き(反時計回り)、点Bと点Cに上向き(時計回り)の回転力が発生しているとみなすことができます。
40g×60cm=ア×50cm+50g×30cm
この式を逆算してアは18gです。
もし、支点をBにして求めた場合
xが逆算で求められて、28gと出るはずです。
おもりの合計が40g+28gで68gなので、バネばかりの合計も68gとなりますから、アは18gとなります。
どうでしょうか?
結構簡単ですよね。
この問題はシンプルにするために棒の重さを0gにしてみましたが、棒の重さがあってもやり方は全く同じ。「重さがわからないところを支点にする」です。
お持ちのテキストの難問に挑戦してみて下さい。
次回も引き続き、てこの難問を解くためのポイントをご紹介していきます。
お楽しみに!