御三家の求める力 part1 ~開成・筑駒・麻布の国語を通してみる学校生活~ 【vol.244】



第244号 2016-05-10


今日のように、
雨が降りそうで降らない日は蒸しますね。

5月の説明会をピックして、
訪問する学校群を選びながら
ああ
数年前もこうやって志望校選択をしていたっけな、

懐かしく思いだす瞬間も。

結局は次男の進学先となった学校に
初めて訪れたのは、
次男が小学校4年生のとき。

ちょうど雨が降りやんで、
傘を閉めたと同時に、
頭上高く、
カラスが落としたフンが、
次男の頭に直撃、
ショックで涙目になり、
ケッペキな次男にとって
学校の第一印象は芳しくないものとなり。

入学が決まったときは、
親子で
あの時「ウンがついたんだよ」と
くだらないことを言って笑いました。

これをお読みのみなさまは、
いやいや、
思い出話を語られても。
とお思いでしょうが、
数年後にはきっと私のように
あのときはああだった、
このときは…

温かな気持ちで
中学受験のころの子供を思い出すことでしょう。

中学受験のころは一度かぎり。
きらきらした思い出として、
いつまでも心に残るよう
わたくしどもも精一杯お手伝いさせていただきます。

お困りの際には、
いつでもご相談ください。

さてさて、
本日は、学校説明会を探している中で
今更ながら
「なぜに御三家と呼ばれる学校群は人気なのであろう?」
と素朴な疑問に至り、
常日頃の教材研究の成果として
一考察を述べてみようと思い立ち。

国語という教科は、
学校にとってメッセージを体現しやすい
不思議な教科であるようです。

国語の入試問題から
入学後の学校生活が見えてくる!

うそのようでホントのお話し。

人気の御三家の求める力を
国語から読み解いてみる
二週連続企画!

今回は男子校からでございます。

【御三家の求める力】part1

さて、
「御三家」というと定義はいろいろございます。
が、
敢えて特に入るのが困難である
「開成中学」「麻布中学」「桜蔭中学」「女子学院」の4校に加えて
「筑波大付属駒場中学」の5校について
本日、そして来週の火曜日に
2週続けてお話ししたいと思います。

< 開成中学の国語から >

まっすぐ。
私にとって、開成中学の国語はこの一語に尽きます。
難しいといわれますが、
誤解を恐れずに言い切るとすると「難しくない」。

何の小手先もいりません。
素材文が少々読みづらさを感じるだけで、
設問自体は直球です。

毎年の傾向としては、次の3つ。
  ① 傍線部の理由を述べさせる、シンプルな「理由記述」。
  ② 「表現」のちがいに着目させて違いを述べさせる「差異記述」。
  ③ 比喩や独特の言い回しに着目させて普通の表現に改めさせる「言い換え記述」。
求められている力は、
テクニックに頼らない、真正面からの読解力と
それを単純な論理構造で記述できる力。

気を付けるべきは、
先述したように素材文のとっつきの悪さくらいで、
たとえば神奈川御三家の男子校や
関西の進学男子校のほうが、
余程ひねった設問を出します。

開成中学の学校生活も
自由で実直な面も持ち合わせている校風ではないかと
そんな風に拝察されます。

それをさらにシンプルに煮詰めたのが、
筑駒の国語かもしれません。

< 筑波大付属駒場中学の国語から >

以前、動画でもお伝えしましたが、
筑駒の国語はいい。

  筑駒中 過去問 動画はこちら

開成中学と同じ路線なのですが、
開成中学より
もっともっと
論理構築力、構成力、そして求められている要点に「気づく力」が、
凝縮、圧縮された感があります。

求められているポイントを的確に押さえ、
論理的に読み解き、
簡潔に述べたら、ハイ、正解。

1問1問が濃いので、
問題数は多くないのに、解き終わったらへとへとです。

おそらくは、
筑駒は与えた命題に対し、
論理を組み立てて道筋を示し、
すっきりとした無駄のない形で呈示することを求めている学校です。

素材文にある「表現」にとことんこだわって
「感受性の正しいあり方」として読み取れているか、
それを的確に表現できるか、
を問いかけます。

実は、
毎年設問パターンは多岐にわたり、
傾向が絞れないといわれる開成中学よりも
はるかに傾向を絞らせない。

そんな筑駒の変わらぬ入試傾向は、
  ① 東大の国語に通じる「どういうこと問題」(本文の言い換え問題)。
  ② 心情の理由記述
  ③ 本文に即した自由記述
の3つでしょうか。

ほぼ毎年出ている設問の型。
といえます。

開成中学と併願する方が多いと思います。
国語の対策は同じ傾向なので、
併願校としては相性の良い学校同士。

国語の入試問題からは、
バランスの良い思考力をもった生徒像浮かびます。

そして、
偏りを見せつつも、
実は健全な麻布中学を見てみましょう!

< 麻布中学の国語から >

ワタクシが麻布中学の国語問題は秀逸!と
何度もほめているのはご存知でしょうか。
(知らない?ぜひこちらをご参考に!)

  麻布中の国語 入試問題のお話
  「麻布中の国語 入試問題のはなし その1」
  「麻布中の国語 入試問題のはなし その2」

まず、上記2校とは決定的に異なる、
「素材文のおもしろさ」。

物語文しか出題しない!
と決めている潔さ。
視点人物だけでなく、
その周辺の登場人物の心情まで読み解かせる、
難度の高さ。

そして、選ぶ素材文の健全さ。

設問自体も奇をてらうことなく、
上記2校と同じまっすぐさを持ちながら、
もっと人間臭い部分を大切にしていることが伝わります。

設問も、記述と選択肢が入り混じり、
単なる心情記述にとどまらず、
誰かを通した他者のとらえ方まで読み解かせようとする。

この「関係性」の中の心情理解、というのが、
麻布中の国語の大きな特徴です。

よく麻布中は、「成長物語」などと言われますが、
その枠にはめられない物語も出題されますので、
適切ではないですね。

それよりも「関係性の網の目のなかでの人間の心情の不自由さ」を
主題にしたものがほとんどだといったほうが適切です。

この学校の懐の深さ、大きさを思わせる国語の入試問題。

関東 男子最難関校群のストレートな作問は、
スッキリ、気持ちの良いくらいです。

その一方の女子難関校 桜蔭中学は?
日本一難しい国語の入試問題、とワタクシは思います。

その難しさはどこにある?
桜蔭中学はどんな力を求めているのでしょう?

大人気、女子学院中学校とともに
来週、ひも解く予定です。

お楽しみに!