2023 桐朋中学校|学校説明会レポート



桐朋中学校 学校説明会レポート(2023年05月24日)


桐朋 学校入り口
桐朋中学校の学校説明会に、受験Dr. 横浜校校長の久米 光太郎が行ってきました。

創立70年を越えた伝統校でありながら、進取の気風に富んだ学校です。

JR中央線「国立」駅より 徒歩15分
JR南武線「谷保」駅より 徒歩15分

2023年05月24日に行われた桐朋中学校の説明会での内容をまとめました。
この内容についてのご質問は桐朋中学校ではなく、受験Dr.までお願いします。

プログラム

校長より

原口 大助校長よりご挨拶がありました。

自律的な学習者の育成を行っている。生徒自らが課題を見いだすこと、一人一人が試行錯誤しながら学習の方法を見つけることが大事。そのために特別講座(高校生中心の希望者を対象に高校の学習を超える範囲を学習する、学ぶ喜びを知る講座)を行っている。
特別講座は40年以上にわたって行われているが、1年をかけて行う通常のものに加えて短期のもの(1話完結で、教員自身の興味・関心を生徒に伝えるもの)を行うようにした。参加のハードルを下げて興味のきっかけづくりにしたい(講座例として「四次元ポケットの脆弱性」「団地に住みたい」などが映像で紹介された)。教員が大学院で研究してその成果を生徒に還元する講座もある。
高3生物部で学会に研究成果を発表して表彰された生徒がいる。武蔵野の雑木林があって鳥の観察ができる環境に惹かれて入学。中3で自ら撮影した写真をもとに分類した研究発表を行った。 その後、本校在校生が給付金を受けることができるゆめチャレンジプロジェクトを受けて機材を購入したことで、観察した種類が70種類から121種類に向上(東京で観察できる鳥類の1/3の種類)。本人は「授業の合間にカメラを持ってウロウロしている僕らに理解と応援をしてくれる」おかげで鳥の観察にうちこめたと桐朋という環境の魅力を語っている。中1から高3スタート時までで観察日数1200日、写真25000枚。
生物部はOBの動物言語学専門、シジュウカラの文法を研究している鈴木さんから刺激を受けている。化学部も卒業生の研究者から毎年レクチャー受ける。お互いを尊重し認め合う姿勢が本校にある。自律的な学習者の育成に向けて本校教員も力を尽くす。

入学試験について

広報主任の河村 理人先生より、入学試験についてお話がありました。

☆入試に関して昨年度も今年度も大きな変更予定なし。桐朋の入試の方針は2点。①基礎確認②小問を解き進むことで結論にたどり着く・筋道を考えてその筋道を書き記すこと。

☆国語 ①登場人物(他者)の立場を理解し全体をとらえる力 ②全体をふまえて自分とのつながりをとらえる力③ことばによってとらえ 自分のことばで伝える力
・例題 2日目の問七 秘密がなくなった理由を筆者がどう考えているか⇒「作家という立場になった」という点に注目できているか。本文にはあるが解答として明確に書いてある答案は少なかった。白紙になるものはなく大まかなところはとらえられていた。作家になるという小学生にとっての想像の世界をとらえるには読書体験が必要。
・差のついた問題 1日目の問九 「筆者が十年前の滞在のことをいま文章に書いた」理由 コロナ禍とロシアのウクライナ侵攻の両方に触れられているか。解答はどちらか一方について書いていて、どちらかが抜けているものが多かった。この2点に触れずに本文のまとめだけの答案だと、0点ではないが高い点数にはならない。
・読書体験が世界を見つめる視野の広さにつながる。世界を広く意識しどういう生き方をしたいか考える。対話を大切にし自分のことばで伝えようとする。他者との関わりが大事。こういうやり取りを日常的にやってほしい。

☆算数 ①自ら考え試行錯誤する②初めて出会う問題でも一歩一歩確認して前進する③失敗を恐れず挑戦する
・例題 1日目の最後の大問七番 正三角形に数字を入れていく問題。上の部分の説明文を理解するのはそんなに難しくない。見たことない三角形でも丁寧にやっていけば解ける。⑴はちゃんとチャレンジすれば解ける ⑵は⑴から導かれる新たな規則性に気づけるかという問題 
・差のついた問題 2日目の五番 図形に計算の要素が入る問題。手続き的に覚えるのではなく(「図形は得意だ」「○○算なら大丈夫」というお子さんは苦戦)、何が行われて答えが出てくるのかを考えることが大事。幅広い分野の理解を問う問題。
・まとめ 後半でも小問は易しいことが多い。幅広い分野の丁寧な理解を。日々の学びの中でやってみる/挑戦する姿勢を忘れずに。試行錯誤/考えることが大事。

☆社会 時代認識を持ち、社会問題に関心が持てているか。幅広い関心を持てているか。
・例題 2日目の一は桐朋らしい定番問題 女性の記録を時系列に並べる問題。得点率は7割弱。近代の資料が多くやや難しかったのか、想定より低かった。
・差のついた問題 1日目の三番の公民の論述 提示された資料を踏まえた解答が少なかった。男性/女性、正規/非正規、高賃金/低賃金の二項対立をとらえているか、様々な資料から有意な差を見つけることができるか。資料読解と作図をする問題で、母子世帯の非正規が43.8%で父子世帯が6.4%と比較して年収が2倍(母子世帯200万円、父子世帯398万円)だと差が少ないと見えるがそういう問題ではない。全然ダメという解答は少なく、何がしかは書いてくれている。満点もいる。
・まとめ 細かな知識よりも時代や地域の特徴を意識する。ニュースなどに関心を持つ/日常の話題として他者と会話をすることの中で腑に落ちる理解につなげてもらいたい。

☆理科 日常の中にある理科の要素に興味関心を持ち「なぜ」→調べようとなってほしい。知識の活用データ分析→新しい発見に。
・例題 1日目二番の化学 問五⑴基本事項の確認 正答率8割。⑵は上を踏まえた問題 正答率5割⑶表とグラフを読み解く 名前を答える問題 正答率3割 温度を答える問題 正答率1割以下。表にメモをとっていってほしい。こういう問題を楽しいなと思える子たちに来てほしい。
・差のついた問題  2日目の問一 問1〜3がバネの性質の確認 問4 複数の基本事項が理解できているか 問5は基本事項を変え、新たな条件を加えた設問への対応が必要。
・理科のまとめ 学んだ知識/与えられた知識の理解と活用から新しい発見に

☆入試問題のまとめ 広く関心を持ち、何事もやってみる。考える楽しさ つながる面白さ わかる喜び

進路・学校生活について

引き続き広報主任の河村 理人先生より、進路・学校生活についてお話がありました。

☆毎年生徒は遠足に行く。そこで自分との対話、クラスメイトの存在、順位や勝敗と関係ない達成感を味わう。遠足委員は下見に行き、クラスメイトに説明し、当日は案内や点呼も行う。遠足委員が行事の主役。 桐朋には様々な係や委員が存在する。今の主役は桐朋祭学年参加委員、そのあとは林間委員。すべての生徒に何らかの仕事や主役になる機会が与えられる。生徒自身が自主的主体的に進路を考える。進路については段階を踏んだ指導を行っている。担任による個人面談と進路指導部によるガイダンスを行っている。高校生では進路指導を軸とした在卒懇を開いている。10年前に卒業したOBが高1に現在までの道のりを語るもの。仕事の内容や魅力、大学の専攻と現在の仕事、高校時代に持っておくべき職業観などを話す。高2での在卒懇は、大学などで研究指導にあたる卒業生が「大学とは、学問とは」を語る。高1では職業・社会へのイメージを持ち、高2では学問分野への探究を行い、高3では大学の選択を行う。大学を選ぶ前に学部が選ばれていなければならないと考えている。桐朋卒業の医学部生との進路懇談会も行われている。 

☆進路を切り拓くために
授業を基本に当たり前のことをしっかりと身につけることが重要。基礎基本の徹底と本質的な理解が必要。自ら考える姿勢を養っていく。自主教材やオリジナルプリントを活用し、夏期講習は通常の授業をさらに発展させた内容の演習を行う。実力テスト・校内模試・外部模試は、平常授業の定着度合いを確認し今後の学習に活かすために活用している。

☆ほぼ全員が四年制大学へ進学している。現役進学率は55%、合格体験率は70%。国公立大の合格者総数が去年150→135と少し減った。文系理系の比率は3:7か4:6、幅広い進路が選ばれている。男子校だからといって理系中心とはならない。現役合格者数は入試多様化で年々多くなっている。学校推薦型選抜の枠はあるが早慶でも使い切ってはいない。本校生徒は一般入試が主流。指定校で10名、公募で5名、総合型選抜で2名が進学した。

☆志望を叶えるために
進路資料を活用し、各学力層をそれぞれ伸ばしていく仕組みがある。基本姿勢は生徒自身が自主的・主体的に進路を考えること。段階を踏んだ指導、担任による個人面談と進路指導部によるガイダンスを行っている。

学校訪問を終えて

自然豊かで広々とした環境の中、プラネタリウムや大きな図書館などの充実した設備を備えたアカデミックで自由な雰囲気の学校だった。ぜひここに子どもを通わせたいと考える熱心なファンがいることも納得した。一方進学実績の面では、浪人率が45%と多く、他校と比べてやや苦戦している印象がある。