皆さま、こんにちは!
ご家庭からのよくあるお悩みについて、回答してみようという企画の第3弾です。
前回まで「やってもやっても伸びないのですが?」という、お悩みについて、8回にわたって考えてみました。
今回は全8回の内容をまとめて、このテーマを終わりにします。
それぞれの回のポイントを以下にまとめます。
詳しくは、それぞれの回のブログのURlを掲載しておきますので、そちらをお読みください。
第1回のポイント
まず、「伸びない」と言っても、実力が伸びていないのか、成績が伸びていないのか、は微妙に違います。
特に、偏差値という指標は相対的なものなので、自分の実力は伸びていても偏差値が下がることはあり得ます。
数字だけに振り回されずに、「ここは以前に比べてできるようになっているな」という評価を大切にしましょう。
お子さんのモチベーションの維持のためには、実力アップを正しく評価することは重要です。
その上で、それでも努力のわりに実力が伸びていないということもあり得ます。
その場合は、努力の仕方が間違っているのではないか?と疑ってみましょう。
トレーニングを行うときには、自分のやっているトレーニングの意味をきちんと理解して行うことが大切です。
やってもやっても伸びないという場合は、意味もわからず反復練習しているということが多いです。
結果として、「意味も分からず丸暗記」の状態が生まれます。
良いトレーニングというのは、良問を通して本質的な理解を深めることです。
しかし、そのような良いトレーニングが小学生に自力でできるかというと、それはもちろん難しいです。
経験豊富な専門家にお子さんの状態をチェックしてもらい、効率のよいトレーニングをしてもらってください。
以下が、私がお子さんを指導する際に意識してチェックしているポイントです。
①取り組んでいるトレーニングの意味や理屈を言葉で説明できるか?
②取り組んでいるトレーニングはいまの実力や改善点に適したトレーニングか?
③取り組んでいるトレーニングの量やかける時間は適切か?
④取り組んでいるトレーニングが応用的な場合は基礎となることの理解は十分か?
それぞれについて、第2回~第8回で説明します。
【中学受験でよくあるお悩み】やってもやっても伸びないのですが?①
第2回のポイント
「意味もわからず丸暗記」になるのはなぜか?
それはおそらく、それが小学生にとって、短期的にはとても合理的な勉強法だからです。
ひとまず目の前の課題をクリアして、解けない・できないと思われる状態を避けようということです。
しかしこれは、最近の中学受験の学習内容の高さや進度の早さを考えると仕方がない部分もあります。
多くの平均的な小学生にとっては、「意味もわからず丸暗記」状態になってしまうのも、当然な状況なのです。
では、そういう状態に陥ることを避けしようとした場合、なにが大切になってくるのか?
その一つの答えが、チェックポイント①取り組んでいるトレーニングの意味や理屈を言葉で説明できるか?です。
表面的にはできているように見えても、言葉で説明させてみると実はわかっていないということはよくあります。
このあたりが小学生の指導の難しいところで、表面的に見ているだけではわからないということが多いのです。
つぶさにお子さんの様子を観察しながら、色々と言葉にさせてみて、それでようやく見えてくることがあります。
ご家庭でチェックが難しい場合は、ぜひ専門家の先生に頼んでみてください。
できなくなっている原因と、どうすればできるようになるのかの解決策を知っている人が専門家です。
【中学受験でよくあるお悩み】やってもやっても伸びないのですが?②
第3回のポイント
トレーニングには適切な負荷というものが必要で、負荷がきつ過ぎても、なさ過ぎても意味がありません。
意味がないトレーニングだとすると、伸びないだけでなく、やり続けることも難しくなります。
大切なことは「トレーニングを続ける」ことで、そのためにも取り組む内容というのは大切です。
おそらく、「ちょっと頑張ればなんとかなる」というくらいの負荷が一番良いのではないかと思います。
しかしながら、勉強の場合は、これがなかなか難しいのです。
自分の実力と、目の前の問題のレベルにどのくらいの差があるのかがわかりにくいからです。
きちんとわかっている人が見てあげて、適切にアドバイスをしてあげる必要があるでしょう。
本来は苦手な科目ほど時間をかけてじっくりトレーニングを積むべきです。
しかし、どうしても苦手なものほど後回しになりがちです。
これも適切な負荷をかけるのが難しい理由のひとつです。
どうしても「できることからやる」ということになりがちです。
その科目を好きになれば自分からやるようになるのでは、と考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、「好きだからやる、やるからできるようになる」のではなく「できるからやる、やるから好きになる」のです。
ですから、放っておけばお子さんは「自分のできること」をやることが多いです。
成績を上げたいなら、できないことをできるようにするトレーニングが必要です。
「やってもやっても伸びない」ときは、やっていることができることだけでは?ということも疑ってみてください。
【中学受験でよくあるお悩み】やってもやっても伸びないのですが?③
第4回のポイント
第3回に続いて、適切な負荷をかけることの難しさについて、中学受験の環境面から考えてみます。
大切なことは、いまの自分のレベルや、練習すべき内容に適した教材に取り組むということです。
しかし、集団塾に通っている場合、そういった学習をすることはなかなか難しいです。
これは集団塾に問題があるという意味ではなく、形式上の問題なので、どうにもならないことだということです。
しかしながら、すべてを個別や家庭教師でまかなうというのも、費用の問題が大きく現実的ではないです。
現実的にとれる選択肢の中で、色々と工夫して学習を進めていくしかないのが現実です。
では、諦めずに何とかするとして、取り組むべき教材はどうしたらいいでしょう?
学習相談の際に、「おすすめの教材はありますか?」という質問もとても多いです。
しかし、中学受験の場合は、例えば本屋さんに行ってみても、そこまで良い教材は手に入りません。
ですから、中学受験の場合は、集団塾からもらえるテキストというのが、それでも比較的良い教材です。
手もとにある教材を何とかやりくりして、勉強していくのがお勧めです。
ただし、ご家庭でそれを判断して、手元の教材でうまくトレーニングを行うのは簡単ではないかもしれません。
そんなときは、やはり専門家を頼ってください。
中学受験の学習はとても特殊です。
そんな特殊な領域の話なのですから、それなりの専門家に判断してもらわないと、よりよい選択はできません。
本当の専門家なら、ありあわせのものでもなんとかできますし、必要があれば自分で教材を作ります。
目の前のお子さんに最適な負荷のトレーニングを行うというのは、そのくらい難しいことなのです。
【中学受験でよくあるお悩み】やってもやっても伸びないのですが?④
第5回のポイント
効率の良いトレーニングのためには、やはり取り組む内容や時間・量というものに目を向けることが重要です。
4科目にかける時間のバランスとしては、算数:国語:理科:社会がおおむね4:2:1:1くらいがいいでしょう。
1問にかける時間の目安は、「その問題がテストに出たとして、実際にどのくらいの時間が使えるか?」です。
例えば、算数の問題なら、テストで1問にかけられる時間は、およそ2.5分です。
5分考えてどうにもならなければ、それは解けない問題だと考えた方が良いです。
解説を読んで、次の日や、2、3日後にもう一度チャレンジしてみて、それで解けるならOKです。
このようなイメージで、1問に時間をかけすぎないように、合計で2時間もやれば1日の量としては十分です。
国語の場合は、読解問題1題にかけていい時間は30分前後です。
逆に考えると、国語の学習は毎日30分くらいでも、読解問題のトレーニングができるということです。
これに、解説を読んで考える時間や、漢字や語句の知識の勉強の時間が加わって、約1時間になります。
算数に2時間、国語に1時間かけるとして、理科・社会はそれぞれ30分ずつやるとします。
これで1日の総勉強時間は4時間です。
小学校の前後の時間をうまく使えば、このくらいの学習時間を確保することは問題なくできます。
1日の学習計画をきちんと立てることが、トレーニングを継続するにはとても大切です。
ただ、必要以上にやりすぎないようにも気をつけてください。
疲労についての問題は、どうしてもご家庭の考えから抜けがちだったりします。
大切なことは、どうしたら一番良い結果がでるか、です。
基本はトレーニングを続けることですが、休むことによってより良い結果がでるなら、それを選択すべきです。
1日の学習計画の中に、休息をとる時間というものも意識して盛り込んでみましょう。
【中学受験でよくあるお悩み】やってもやっても伸びないのですが?⑤
第6回のポイント
何事も基礎・基本が大切です。
基礎・基本があやふやなまま学習が進むと、どこかで急にできなくなることがあります。
そしてその状態で、いくら応用的な学習をやり続けても、なかなか伸びないことに当然なります。
では、ある分野の問題ができなくなっているとして、ではどこまでさかのぼって復習するべきでしょう?
実はこれがなかなかわかりにくいのです。
どこかで行き詰っているときは、どこから復習し直すべきか専門家に指導してもらってください。
お子さんが解いている様子を見たときに、一見すると正しいことをやっている場合は判断が難しいです。
一見すると正しいことをやっているので、その基礎がわかっていないとは、ぱっと見は気がつかないのです。
問題によっては、かなり高度なことができていたりするので、意識してチェックしないとそれを見落とすのです。
ご家庭と学習相談をしていても「けっこうできていると思うのですが…」というお話になることがあります。
しかし、その「できている」というのが、何がどうできているのか、掘り下げて確認した方が良いかもしれません。
思わぬところに大きな穴が開いていて、そのせいでやってもやっても伸びないのかもしれないのです。
なぜそういう状態になってしまうのかというと、中学受験の学習の量とスピードが普通ではないからです。
どうしても目の前の学習に追われて、ひとまずそれを暗記的に乗り切ることになりがちです。
そして、以前の内容を復習したいと思っても、そんな時間もなかなか取れないのが現実です。
ですから、できるだけ今やっている目の前の学習内容の理解があいまいにならないように気を付けましょう。
特に、4年生、5年生のお子さんは、どんなに簡単に感じることでも、基礎・基本を大切にしましょう。
【中学受験でよくあるお悩み】やってもやっても伸びないのですが?⑥
第7回・第8回のポイント
「まさかわかっていないわけがないだろう」、と思うような基本的なことでも、実はわかっていなかったりします。
わり算というものがやっていることの具体的なイメージが思い浮かんでいないというのもそのひとつです。
わり算そのものはできているだけに、「まさかそんなわけはないよな…」と感じます。
しかしこれは、ここ2年くらいで複数のお子さんに私が発見した事実なのです。
案外、簡単な計算のイメージから実はできていないということがあるかもしれません。
では、なぜそうなってしまうのか?
一番可能性が高いのは、そもそもかけ算の意味やイメージがはっきり持てていない、ということです。
九九を覚える前に、かけ算がどういうことをしているのかが、はっきり理解できていないのではないか?
よく意味もわからず、計算結果だけを丸暗記しているのではないか?というのがひとつの仮説です。
「6×5ってことは、6を5つ集めて足しているってことだよなー」と、考えられているのかどうか?
もしそれがないとすると、その逆のわり算を学習するときに、意味がわからなくなっても仕方がないと思います。
こういった状態に陥らないためには、数や計算のイメージを正しく持つことように学習することです。
そもそも数は抽象的な概念なので、それを具体化してイメージできているかは、非常に大切です。
かけ算を学習するときも、「3このおはじきを5組集めるのだから…」ともののイメージと結びつけて学びましょう。
すでに中学受験の勉強を始めている、4年生や5年生の場合はどうしたらいいでしょうか?
どう理解しているのか本人に聞いてみて、わかっていないなら一から教え直すしかないです。
算数は理解不足なことがわかったら、とにかくそこまでさかのぼって理解し直すことが鉄則です。
問題は、それがご家庭ではチェックできない、チェックはできても教え直せない、という場合です。
これについては、毎度毎度の結論で恐縮ですが、できればプロの先生に頼ってください。
どういうことの理解不足が、どういうことのできなさにつながっていくのか、それをわかっているのがプロです。
ご家庭から見れば「まさかそんなことが…」というようなことも、経験上わかっているものです。
理解不足な点がないか、そのチェックだけでもプロの先生にお願いするのが良いです。
【中学受験でよくあるお悩み】やってもやっても伸びないのですが?⑦
【中学受験でよくあるお悩み】やってもやっても伸びないのですが?⑧
最後に
以上が、全8回の内容のダイジェストになります。
大切なことは、トレーニングを継続することです。
ムリのない範囲で楽しく勉強を続けられるように工夫してください。
トレーニングを続けていても、思うような結果が出ないとつらくなります。
下手をすると、やること自体が嫌いになってしまいます。
そもそも、中学受験の勉強は特殊です。
ご家庭だけでは対処できないシーンというのは必ずあります。
ご家庭でどうにもならないときは、早めに専門家に頼ってみてください。
次回からは、新しいテーマに入ります。
では、また次回お会いしましょう。